こんにちは、営業部のTZです。
2024年11月18日に開催されました日本磁気学会第251回研究会(テーマ:「機能性磁気デバイスのための磁性薄膜の成膜技術」)において、弊社研究開発部の齊木が「磁気センサ及び電子デバイス用磁性めっき技術」と題し、以下の内容で講演を行いました。
この講演では、弊社がこれまでに取り組んだ事例を中心に以下の技術について紹介しました。
日本磁気学会様HPは下記よりアクセス!

講演内容
磁気センサの磁気収束板形成
センサ感度向上のため、微弱な磁場を増幅する磁気収束板をめっきで形成します。
ウエハ上にフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成し、電解めっきによりミクロンオーダーの膜厚均一性の高いニッケル鉄合金を成膜します。
また、めっき槽の両サイドに永久磁石を配置した磁場中めっきにより、配向性を持たせた成膜を実現します。
受動部品、バンプ、配線
高周波特性の向上を目的に、ニッケル、鉄、コバルトからなる合金めっきによってノイズ低減やインピーダンス制御を行うことが可能です。
有機EL蒸着用ファインメタルマスク
数ミクロンオーダーの寸法精度が要求されるメタルマスクなどの電鋳構造体において、熱膨張係数が極めて小さいインバーやスーパーインバー合金を使用することで、品質向上に貢献します。
NiCoおよび厚膜Ni
NiCo合金は優れた機械特性と磁気特性を有しており、耐摩耗性や磁気特性が求められる材料として使用されます。ただし、めっき膜の内部応力が大きくなりやすいため、パルス電流やリバースパルス電流を用いためっき条件の工夫により応力をコントロールします。低応力厚膜Niめっきについては下記表をご参照ください。
熱電変換材料
鉄ガリウム(FeGa)合金、通称「ガルフェノール」は大きな磁歪効果を持ち、この特性を利用した振動発電やセンサへの応用が期待されています。めっきによる薄膜形成が可能ですが、応力調整と光沢膜を得るための条件調整が難しい面もあります。
めっき液の酸化抑制技術
Fe成分を多く含むめっき液では、Fe²⁺がFe³⁺に酸化されることが品質に悪影響を与えるため、めっき液中の溶存酸素を脱気システムで除去し、めっき浴を安定化させます。

今後の課題
講演では、以下の課題について言及しました:
めっきプロセスによるナノスケールでの膜構造制御
新規磁性材料の開発
高周波特性のさらなる向上
大面積高速成膜技術の確立
環境負荷の低減
今後期待される分野
講演後、多数のご質問をいただき、磁性めっき技術への関心の高さを実感しました。
また、東京科学大学様のご講演では、3次元磁気メモリ素子に磁性めっきの応用を試みた研究成果が紹介されました。
現在、データセンター増加に伴う電力需要の逼迫に対応すべく、省電力で高速な次世代メモリが求められており、磁気メモリ(MRAM、磁壁移動型メモリ、レーストラックメモリなど)が注目されていまが、この講演で、磁気記録構造部を磁性めっきによりナノオーダーで積層する画期的な手法が検討されていることを知りました。
これが実現すれば、磁性膜めっき技術の応用分野がさらに広がり、実用化が期待されます。
日本磁気学会について
日本磁気学会は、「磁気」をテーマに様々な分野の研究者が集う学会です。研究分野は「磁気記録」「ハード・ソフト磁性材料」「磁気物理」「スピンエレクトロニクス」など、基礎から応用まで多岐にわたります。
詳細は以下の公式サイトをご覧ください。
弊社の強み
弊社では、HDD磁気ヘッドの開発・量産経験を持つエンジニアが多数在籍しており、装置とプロセスの両面から技術開発と量産サポートを提供しています。
めっき装置だけでなく、めっき液の組成やプロセス条件(浴温、電流条件など)の制御を得意としており、任意の磁性膜組成を実現できます。
磁性薄膜めっき技術を応用した電子デバイスの開発をお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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